ヒメカツオブシムシとイガの侵入経路の違い
衣類の食害を引き起こす代表的な害虫として、ヒメカツオブシムシとイガがいますが、この二種類の虫は生態や好むものが少しずつ異なり、それに伴って侵入経路にも若干の違いが見られます。これらの違いを理解することで、より効果的な対策を立てることが可能になります。まず、ヒメカツオブシムシの成虫は、マーガレットやデイジーといった白い花を好み、その花粉や蜜を餌としています。そのため、春になると屋外を活発に飛び回り、洗濯物、特に白いシャツなどに引き寄せられて付着し、そのまま家の中に持ち込まれるケースが非常に多いです。彼らは光に誘われる性質もあるため、網戸の隙間や窓の開閉時に室内に侵入することも頻繁にあります。一度侵入すると、暗い場所を求めてクローゼットなどに入り込み、ウールや絹製品に卵を産み付けます。一方、イガやコイガといったガの仲間は、ヒメカツオブシムシほど活発に屋外を飛び回ることはありません。成虫は光を嫌う性質があり、薄暗く湿った場所を好みます。そのため、窓から堂々と侵入してくるというよりは、物陰に潜んでいて、人がドアを開けた隙に一緒に入ってきたり、古い家具や中古の衣類、カーペットなどに潜んでいて持ち込まれたりするケースが多いと考えられます。また、建物の配管の隙間などを通って、建物内で発生したものが隣の部屋へ移動してくることもあります。イガの幼虫は、自らが食べた繊維やホコリを纏ってミノムシのような巣を作るのが特徴です。このように、ヒメカツオブシムシは「外から飛来する」リスクが、イガは「物と一緒に持ち込まれる」リスクが比較的高いと言えるでしょう。どちらの虫も脅威であることに変わりはありませんが、その侵入経路の違いを意識することで、日々の生活の中でどこに注意を払うべきかが見えてきます。